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育てるという事 後篇

後編のお話を再開

教えることと育てるという事への思い違いに気が付いたのは、ほんの些細なことがきっかけでした。
それは、定着率が悪く、毎月誰かが辞めるので、退職するたびに人員補填が行われる電話営業の職員研修のとき。

毎月のように新入職員の教育があり、入職準備→退職手続きに追われていたころ、景気の低迷から、新人職員をストップし新人の育成全般を2ヶ月間継続する貴重な機会がやってきたのです。

その時、前任や職場の経験者から引き継いで、多少の改訂はしていたものの、特に大きく変わる事のない基本の会話やトークスクリプトをもとに、クレームになる子とならない子、継続してもある期間から解約が増大する子と全く解約が無い子と両極端だと売上分析をしながら気が付いたわけです。

その違いは何なのかと気になり、お客様とどんな会話をしているか、会話のモニタリングをしてわかったことは、「一生懸命にロボットのようにシナリオを一本調子で読む」ことでした。

それは、人間らしさとはかけ離れ、自分たちの良さが全く表に出ていないもの。
その瞬間、営業という仕事は「人は、最終的には営業の人柄からモノを買うことを決める。個性が活かされる楽しい仕事」だったはずなのに、私はこの子たちに何を教えていたんだろう、これではテレビのコマーシャルより悪いと感じた瞬間でした。

新人が職場デビューした時は、ずっとこの調子だったのかと、管理者に訪ねてみると、「前任の時からこの流れは同じ。新人は初々しいよね。いずれ慣れてくるから大丈夫よ」と笑って言う姿に、はじめて「教える」と「育てる」の勘違いに気が付いたのでした。

そして、もう一つのきっかけは、本社が職員研修の基礎でトレーナーのレベルを一定にする試みを開始したこと。評価基準を設け、出来ているか否かの行動を数値で判断するというもので、本社の経営理念や行動指針なども盛り込まれているものでした。

それは、私がいつもやっている、「出来ていない事ばかり、山のようにメモをとり、羅列し、フィードバックをするという繰り返し。」

その時の私の心境は、「また、この流れをされる?される側はストレスですごく嫌だ。慣れない人は自信が無くなり、自分には向いていないと思い込んで、辞退する事がわからないのか?」と思った瞬間、私も全てにおいて同じことをしていて、人の事を批判できない自己矛盾をしている自分自身の姿に気が付いたわけです。

カウンセリングの世界でいえば、自己一致した瞬間かもしれません。

その気づきの時間は、ほんの一瞬で、これまでの人生のすべてを振り返る瞬間でした。それと同時に、相手の立場にたって、物事を捉えるという事の真の理解が自分のものになった瞬間でもあったと思います。

それからの私は、「育てるとは何ぞや」という所から、「一人前とは何だろう」という事を常に意識し捉えるようにしたのです。その成果は、定着率が上がるという事で結果を出すことが出来ました。

いまでも、その事を思い出して自分を戒めるのですが、その当時の私は、技術やテクニックを教える事ばかりを気にして、相手がどう感じているか、どう受け取られているのか、その人の本質を全く無視して、自分のやり方が一番正しいと思い込み、反対に相手は間違っているから正してあげるという考えの押しつけで、なんとも上から目線で相手の可能性を潰していた浅はかさを恥じました。

反対に、その人達のおかげで、自分の過ちに気が付くことが出来た訳ですから、今度はその経験を誰かの役に立てるように活かしたいと、自分の恥をさらしながらこの仕事をするわけです。

この仕事は、自分自身の経験を通じて、私自身へ「初心を覚えておけ」「取り返しがつかない事をしたんだぞ」という戒めもあるのだとつくづく感じます。

好きな事を仕事にしろというお話がある中で、私は「人は好きな事しかしないし、出来る事しかしないもの。」と考えています。

何故ならば、自分ができない事や、苦手な事がストレスになるのですから、何の仕事についても、どの仕事をしても、ストレスの原因が変わらない限りは、一生ついて回るものです。
それならば、今の私のように、ストレスなくできるものから、少しづつ段階を踏み、ストレスあるものが出来るようになるものを増やしていきながら、いつも原点に戻れる仕事を続けるという事もありなのかもしれません。

このホームページを読んでいる人は、私の経験を踏み台にして、今以上に育って欲しいと思います。
そして、過去に自信を喪失したきっかけを作った人達への、謝罪と感謝の気持ちも込めているものでもあります。

今の私が存在するのは、皆さんが色々な事を、色々な視点で教えてくれたおかげなのです。


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